
春秋時代のお話です。晋国の大夫(中国古代の官職)である伯牙(はく・が)は、琴の名人でした。彼は若い頃、成連(ちぇん・りぇん)に琴を学び、3年が経った頃、琴弾きの技術をすべて身につけました。しかし、情感のある美しい音色を奏でることはできませんでした。
成連は言いました。「私の師匠が、東海の蓬莱山(ほうらいさん)にいる。彼の琴の音は非常に美妙で奥深く、また人に教えるのがとてもうまい。彼の教えを請うことにしよう」
そして二人は、船で蓬莱山に渡りました。成連は「君はここで練習をしていなさい。私が先に、師にご挨拶をしてくる」と告げ、船で去って行きました。
伯牙は長い間、一人で琴を弾いていましたが、いくら待っても成連は現れません。島には誰もおらず、遠く離れたところに静かな山林があるだけです。一人取り残された伯牙は、ただ毎日大波が岩にぶつかる音を聞き、青い海を眺め、空を羽ばたく鳥たちのさえずりを聞いていました。
ある日、伯牙は思いました。「実は、師匠などいないのではないだろうか?よし、今は不安を捨てて、自分が見たままの情景を琴の音に込めてみよう」。周りのすべてが消えてしまったかのように、彼は我を忘れて琴を弾き続けました。曲が終わると、師が戻ってきました。
成連は微笑みながら、「伯牙よ、この偉大なる大自然こそがあなたの最高の師匠だ」と彼に告げました。伯牙はハッと悟り、師に深々と頭を下げました。
(翻訳編集・豊山)
転載 大紀元 https://www.epochtimes.jp/p/2020/03/53489.html
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