
洞窟での修行はまた一年が過ぎた。
ある日、一群の狩人たちが狩りに出たが、終日狩りをしても、何も得られなかった。彼らは面白くなく、腹も減っていて、何ともなしに漫然と歩いているとミラレパの洞窟の入り口に行きついた。一人が中に入ってみて驚いた。
「あれま!あんたは人か、はたまた幽霊か」
「私は人です。この洞窟で修行している者です」と、ミラレパは答えた。
「あんたが修行者か。なんでそんな変わり果てた姿になっちまったんだい。まるで骸骨のようだし、それになんで全身がそんなに緑色なんだよ」
「長い間、野草ばかり食べていて、こんなになってしまったのです」
「ここに食べ物があるのか。あるんだったら、少し分けてくれないかな。後で金は払うからさ」。その他の狩人たちも洞窟の中に入ってきて、辺りを見回したが何も見つからず、内心面白くなくなって、ミラレパを睨み付けると怒鳴った。「やい!早く食べ物をもってきな!さもないと、あんたを殺してやるぞ」
「私には、野草以外に何もありませんよ。もし食べ物があったとしても、隠す必要などありません。修行者に食べ物を供養する人はあっても、修行者の食べ物をとる人などいませんので」
「修行者に供養なぞして、何の得があるというのだ」狩人の一人が嘲笑して言った。
「修行者に供養すれば福が得られます」ミラレパが答えた。
「よし!よし!」それを聞いた狩人の一人が笑って言った。「それなら、あんたを供養してやろうじゃないか」。彼はそう言うと、ミラレパを抱きかかえて持ち上げると地面に投げ捨て、また抱きかかえるとまた投げ捨てを繰り返した。
ミラレパは非常に衰弱していて、そのようにされるとまるで全身の骨がばらばらになってしまうかのようで苦痛は耐えがたいものであった。彼らはミラレパを凌辱して苦痛を与えたのにもかかわらず、彼は怒ることもなく、却って慈悲心を生じて涙を禁じ得なかった。「このように修行者を凌辱し、侮辱することは、実際大きな罪だ。彼らは他日、必ずこのことを償わなければならず、それは大変に可哀そうなことだ」
「おい!もうやめろよ!」ある狩人が声を上げた。彼はじっと傍らに座り、他の狩人たちのようにミラレパを侮辱することはなかった。彼は、ミラレパを侮辱している狩人に言った。「もうやめたほうがいい。わたしがみたかぎりでは、彼は本当の修行者だ。もし本当の修行者でなかったとしても、そのように弱った人をいじめるものではないよ。それは英雄好漢のやることじゃない。私たちがこんな境地に落ち込んだのも彼のせいじゃないし、その怒気を勝手気ままに他人にぶつけるものではないよ」
この狩人はそういい終えると、ミラレパに言った。
「行者さん。あんたは本当に素晴らしい。私はあなたの修行を邪魔しなかったので、どうか私を守ってくださいますように」
「俺もすでに、上下上下にあんたを供養した。どうか俺も守ってくれ!はははは!」ミラレパを凌辱した狩人は大笑いして去って行った。
古今東西、人々は修煉者を尊敬してきた。西洋の牧師、神父、東洋の和尚、ラマ、古代の祭司などがそれであった。古代の人は、天災人禍、生老病死の問題をこれらの人たちに託してきた。したがって、古代の人たちは、修行者を尊敬し、侮辱することはなかった。
これらのミラレパを凌辱した狩人たちには、後にある事件が発生した。ミラレパを凌辱したあの狩人は、裁判沙汰となり死刑に処せられ、その他の狩人たちもまた厳罰に処せられたが、ミラレパへの凌辱をやめさせようとして苦言を呈した狩人だけは処罰を免れた。
(続く)
(翻訳編集・武蔵)
転載 大紀元 https://www.epochtimes.jp/p/2021/04/72257.html
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