
光陰矢の如し。ウェンシーがここウェイツァンに来てから早一年が経とうとしていた。この間、ラマはいくつかの呪文と口訣を授けた。この口訣を学び終えると、ウェンシーの同学は家に帰る準備を始めた。
「わたしたちはもう大概が家に帰る。ラマが教えてくれたこの口訣は相当に深淵で、郷里に帰ったら使ってみるよ」
「全くだ。この口訣があれば、法事をして災難を解除することだってできるさ。家に戻ったら、故郷に錦が飾れること間違いない」
同学が興奮して話し合っているのをウェンシーは黙として聞いていた。彼は思った。「現在学んだこの呪術では、仇は討てない。もしこの役に立たない呪術だけで家に帰ったら、母は必ず自殺する」。彼はまた、母親が泣いていた情景や、それに答えた自らの決意、別れ際の母親の話などを思い起こした。ここ一年、彼の脳裏にはその映像が焼き付いて離れなかった。
「私は帰らないことにする」。ウェンシーが突然、口をひらいた。
「君は家に帰りたくないの?」 中の一人が怪訝そうに聞いた。
「そりゃ帰りたいさ。でももっと肝心な呪術を学ぶまでは、帰っても合わす顔がないんだよ」
「まだどんな呪術を学ぶというの。われわれが学んだ口訣は相当に深淵だし、ラマもそう言っていた。君がなにを考えているのか分からない。もし君がここにいるとしても、われわれは先に行くとするよ。君は自分で決めたらいい」。中の一人が言うと、皆が頷いた。
こうして一行五人はラマを礼拝した後、ラマが授けた羊毛の衣服を身につけて帰路についた。ウェンシーもまたその衣服を身に着け、一行を送る半日の道を歩いた。ラマの家に戻る道すがら、たくさんの牛糞を拾い、それをラマの家の一番肥えている畑に肥料として与えた。
窓からウェンシーの姿を見つけたラマは傍らの弟子に言った。「わたしのところに呪術を学びに来た弟子は多くいたが、彼のように素質のいい者はめったにいない。もう会えないかもしれない。彼は今朝、別れの挨拶に来なかった。それは、彼がきっと再び帰ってくることを意味する。彼は最初にここに来た時、親戚と隣人たちからひどい目に遭わされたので、仇を討つ呪術を学びに来たと言っていた。もし本当だとしたら、授けなかったら可哀そうな話だ」
ウェンシーが戻ると、その話を聞いた弟子が駆け寄ってきてラマの話を伝えた。ウェンシーはその話を聞くと興奮した。「ラマはやはり仇を討つ更に凄い呪術を知っている!」彼がラマのところへ行くと、ラマはすぐに彼に問うた。
「ウェンシー、皆は家に帰ったが、どうして君は帰らないのか」
ウェンシーはラマから授かった衣服を脱ぐと、またラマを礼拝して言った。「先生、私は七歳のときに父親を亡くしました。それからというもの、叔父夫婦がわたしたち親子をだまして財産を奪い、わたしは幼少のころから牛馬のようにこき使われました。母も生きるか死ぬかの生活のなかで、村人も同情しないことはなかったのですが、だんだんとあざけ笑うようになって…」。ウェンシーはここまで言うと悔しくて涙を禁じえず、また続けた。「叔父の勢力は大きく、わたしたちには財産を奪い返せないし、仇も討てません。母が言うには、家財を奪い返せる人がいないので、仇を討つ呪術を学ぶしかないというのです。もし呪術に精通しないで家に戻ったら、母はわたしの目の前で自殺するというのです」
(続く)
(翻訳編集・武蔵)
転載 大紀元 https://www.epochtimes.jp/p/2021/03/69816.html
アメリカ (140) ウクライナ (233) コロナウィルス (158) スパイ活動 (166) トランプ (338) バイデン (344) バイデン政権 (161) ポンペオ (173) ロシア (340) ワクチン (318) 上海 (209) 中共 (2948) 中共ウイルス (570) 中共当局 (332) 中共軍 (188) 中国 (2071) 中国企業 (150) 中国共産党 (1319) 中国崩壊 (149) 中国当局 (147) 中国経済 (285) 中国製 (155) 人権侵害 (333) 伝統文化 (236) 北京 (239) 北京五輪 (180) 南シナ海 (151) 台湾 (841) 台湾海峡 (148) 封鎖 (154) 抗議デモ (147) 新型コロナウイルス (196) 新疆ウイグル人 (208) 日本 (540) 法輪功 (349) 法輪功学習者 (200) 洪水 (202) 災害 (196) 疫病 (174) 米国 (951) 習近平 (932) 臓器狩り (257) 軍事 (220) 迫害 (217) 香港 (482)