羊の話ー羊は吉祥のシンボル【動画】

【脱党支援センター2020年9月16日】

【冒頭の詩】
節操で知られる漢の「蘇武(そぶ)」
ひざまずき乳飲み、感謝を表す
カモシカの角は能力の証し
迷える子羊は多いけど
分かれ道ばかり、見つからない
勝手に連れて行けば盗人に
檻(おり)を直し、今度は狼を防ぐ
春が来て、吉祥が訪れる

漢字に囲まれて生活していると、気づかないことも多い。当たり前すぎて考えることもあまりないが、じっくり探求すると実に面白い。そこが漢字の醍醐味であり、また古くからの漢字文化の真髄でもある。

今回取り上げる字は「羊」。象形文字の「羊」は正面から見た羊の頭を表したもので、上の点々は羊の角を表している。この一見普通の「羊」は、実は古代の中国人にとっては、吉祥のシンボルで、「吉祥」の「祥」という字には昔「ネへん」がなく、「吉羊」と書いていたという。また、「美」や「善」などの漢字にも「羊」が入っており、どの字もいい意味が含まれている。

なぜ羊がめでたいのだろうか。それはずばり、羊は人類にとても多くの実りをもたらしてくれるからだ。栄養豊富なミルク、おいしくヘルシーな肉、そして温かくてソフトな毛皮など。全身が宝の羊は古代の人にとって正に吉祥の代名詞、「吉羊」だったのだ。

また、「群」という字にも「羊」が使われ、温順で集まって仲良く暮らす羊の特徴から出来た漢字である。「鮮」の字となると、「魚」と「羊」が両方入っており、昔の中国の西北地区は魚がなく、一方、東南の沿海地区では羊があまりないので、2つを並べることで、「珍しく、おいしい」という意味を表現したという。

さらに、遡ること2千年、前漢時代の蘇武という武人にまつわる「蘇武牧羊」の話も有名である。当時、中原地域の漢は西北地域の少数民族匈奴との親善を図るため、蘇武をはじめとする100人あまりの使節団を派遣したが、蘇武一行が任務を達成し、漢に戻ろうとした時、匈奴で内乱が起こり、蘇武一行も巻き込まれた。漢を裏切って、匈奴王に従うように求められた蘇武は毅然と断り、残虐な刑にも屈することはなかったという。匈奴王はそんな蘇武をシベリアのバイカル湖一帯に流刑し、羊を飼うことを言い渡した。辺境での羊の放牧は19年も続き、やがて、匈奴も漢も新しい王に変わり、蘇武はやっと漢に戻ることができた。
 
 「蘇武牧羊」の物語は蘇武の「強権を恐れず、気高い民族節操」を称え、昔の中国人の倫理人格観を示した。蘇武の崇高な気慨に感服した詩人の李白は『蘇武』という詩を謳った。

 「蘇武在匈奴    蘇武匈奴に在り
  十年持漢節    十年漢節を持す
  白雁上林飛    白雁上林に飛び
  空伝一書札    空しく伝う一書札

  牧羊辺地苦    羊を牧して辺地に苦しみ
  落日帰心絶    落日帰心絶ゆ
  渇飲月窟水    渇しては月窟の水を飲み
  飢餐天上雪    飢えては天上の雪を餐す

  東還沙塞遠    東に還って沙塞遠く
  北愴河梁別    北に愴む河梁の別
  泣把李陵衣    泣いて李陵の衣を把って
  相看涙成血    相看て涙血を成す」

転載NTDTVJP

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