
今回は中国の古いお話を紹介させて頂きます。中国道教に入門し精神修養していた男が、修行を中断して商売をするよう師匠から告げられます。精神修養と商売には何か関わりがあるのでしょうか?
2千年ほど前、国の役人を目指していた男がいました。何度も試験に失敗し疲れ切った男は役人の道を諦め、山に入り中国道教に入門しました。
修行を始めて数年後、道教の師匠は「天に宮殿を建てたいから、里に下りてこの口紅を売ってくれんか」と男に頼み、不思議な力で山積みにされた石を上質な口紅に変えてしまいました。「こんなに凄い力があるのにどうして私に金儲けをしろと言うんだろう」男は戸惑いましたが、師匠の命令通り口紅を背負って里の市場に向かいました。
市場は活気に満ちていましたが、内気な男は大きな声で客寄せをする事ができません。おどおどする男を遠くから見ていた師匠は、恐ろしい肉屋に変身して男の前に現れました。「何をしている?」と肉屋が言うと、男は消えそうな声で「口紅を売っています」と答えました。
肉屋は「何だって?聞こえないね。物売りならもっと大きな声を出してみろ」と怒鳴りつけました。怖くて逃げ出したいですが、師匠の命令通り口紅を売らなくてはなりません。恐怖心を抑え口紅を売る事に集中すると、不思議と大声で客寄せが出来るようになりました。男は、一生懸命になれば弱点を克服し周りの影響も受けなくなる、ということを悟りました。

それから1か月過ぎましたが、まだ1箱の口紅も売れていません。精神修養の妨げとなる女性に話しかける事ができなかったのです。悩んだ男はある悟りに達しました。「男だろうが女だろうが人間に変わりはない。私は精神修養者、私の心を動かすものは何もない」するとどんな人間に接しようが心が動じなくなりました。
そんな男を試そうと天の妖精が魅力的な女性に化けて男を誘惑しますが、それでも男の心は全く動じません。妖精たちは立ち去り、暫くすると1人の妖精が老婆の姿で戻ってきました。老婆が男から買った口紅を付けると、途端に若くて美しい少女に大変身しました。これに驚いた人々は我先にと口紅に飛びつき、遂には評判を聞きつけた皇太后が大量の金塊と引き換えに全ての口紅を買い取ったのでした。
口紅を全て売った男は金塊を持って意気揚々と山に戻りますが、その帰り道、山賊に囲まれた若い少女たちに出くわします。少女たちを救おうと、男はとっさに叫びました。「ここに大量の金塊がある!その少女たちを放したら、この金塊をくれてやるぞ」金塊に目のくらんだ山賊はすぐに少女たちを解放しました。
人助けは出来たものの全てを失った男は、肩を落として師匠の元に戻りました。男から全てを聞き終えた師匠は、静かに空を指さします。男が見上げると、そこには天に浮かぶ荘厳な宮殿がありました。「お前はこの宮殿を建てる手助けをしてくれたんじゃ。お前は口紅を売る間も心を動かさなかった。それが宮殿を建てる手助けになったんじゃよ」
男はハッとしました。遂に全てがわかったのです。商売をするには性格も変えなくてはならないし誘惑にも負けてはいけない。商売をする事は精神修養に繋がっていたのです。師匠は色々な人間に変身して男を見守り、男が向上するよう手助けしてくれていたのでした。
商売に関わらず仕事をしていると色々な試練が立ちはだかります。でもその試練に振り回されず、初心を貫徹しなければ何も成功しません。何のために仕事をしているのか、今一度立ち返ってみることも必要なのではないでしょうか。
(大紀元日本ウェブ編集部)( 轉載大紀元 )
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