【党文化の解体】第2章(7)「内部から宗教を批判する」

1-2)-(5) 中共の宗教協会を設立し、内部から宗教を批判する

 五十年代、中共は自らが完全に掌握できる佛教協会と道教協会を設立して、自分の代理人に協会の要職を占めさせて、事実上中共に付属する「民主党派」のような政治組織を作り上げた。このような協会は共産党の組織体系の中で統一戦線部門に管轄されており、行政体系の中では国務院宗教事務管理局に管轄されている。その目的は宗教を繁栄させることではなく、宗教を統治するためである。

 中国佛教協会は、協会の設立を宣告する文書の中で、熱烈に中共の反革命分子に対する弾圧を謳歌し、しかも「このすべてを指導している、われわれの偉大な指導者毛主席及び中央人民政府に感謝する」と媚び諂った。その有様は世俗の組織に比べても些かの遜色も無かった。

 釈迦牟尼佛は元々カピラヴァストゥ国の王子であり、出家した後にも、別の国から王位を譲ってあげたいという申し出もあったが、釈迦牟尼は一切受け入れず、山林に入って修行に励んだ。こう見れば、佛教の真意は人間の栄華や世俗の政治に関わりないことが分かる。しかし、中共に操られている中国佛教協会がその設立規程の中で確立した宗旨では、佛教徒に「社会主義の精神文明建設」に積極的に参加することを要求している。

 道教の状況も佛教と同じである。2005年に確立された中国道教協会の規程に、「時事政策の学習を強化し、道教徒の愛国主義精神と社会主義社会に適応する自覚性を高めよう。……道教の社会主義社会への適応を促進し、調和のとれた社会を構築するために貢献しよう」などということが明文化されている。言い換えれば、道教協会は『道徳経』を中共の政策に適用して、露骨に信仰の中身を変えようとしたのである。

 佛教協会にしろ道教協会にしろ、いずれも政治的に中共に投降したので、当然ながら中共の考え方に従って教義を解釈するようになった。伝統の宗教では、現実の世界は苦難に満ちたところだと認識している。もちろん、この苦難とは天国世界の美しさに対比して言っていることである。さもなければ、釈迦牟尼が王位を捨てて修行に励んだことが解釈できない。

 しかし、中共の宗教代理人は中共統治下の中国を「暗黒の世界、苦難に満ちたところと言ってはならない」と指導した。さらに、信徒の世俗化を促進するために、各宗教協会は「消極的な人生観や現実から逃避する宗教観念」を批判し、教徒たちに「人間天国」を信じるように指導した。このような言い方は、佛陀の言われた「苦、集、滅、道」という四諦妙法に全く相反している。

 これらの宗教協会の代理人は、宗教の中で確立された立場を利用して内部から宗教への批判を行った。例えば、佛教協会の代理人は、佛教の戒律を廃除すべきと唱え、これらの戒律の章典により多くの青年男女を死に至らしめたと主張した。このような内部からの批判は中共の外部からの誹謗より、その破壊力が遥かに強かったのである。

 (続く)

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