5,香九齢,能恩席,孝於親,所当執。,融四歳,能譲梨,弟於長,宜先知。
東漢の黄香は、九才の時に父母を敬い孝行を尽くすことを知った。冬の日は、父母がよく休めるように、あらかじめ自分が床に入って身体でこれを温め、夏の日には、扇子を使って扇ぎその席を冷やした。彼女の細やかな心遣いと孝行は、子女の手本となった。
東漢の孔融は四歳の頃、梨を兄弟で分け、一番大きな梨を長兄に配り、自分は一番小さな梨を取った。兄弟の間では、お互いに譲ることが必要で、長兄は弟や妹を保護し、弟と妹は長兄を尊重しなくてはならない。このような道理は、子弟なら誰でも知っていなくてはならない。
6.首孝悌,次見聞,知某数,識某文。一而十,十而百,百而千,千而万。
子弟に対する教育は、品徳教育がもっとも重要で、まず最初に孝行を言って聞かせ、その次に知識を見聞きする学習をさせるのである。授業の時には、知識が異なることに注意し、異なる教授方法を採らなくてはならない。
数学の方面では、古代中国では十進法を採用していた。「一」は、自然数のはじめであり、十個の一を加えると十になり、十個の十を加えると百になり、十個の百を加えると千になり、十個の千を加えると万となる。
7,三才者,天地人,三光者,日月星。三綱者,君臣義,父子親,夫婦順
中国の古人は、宇宙の基本的構造は、三才と三光から成るものと考えていた。三才は天地人を指し、人類社会の基礎を構成し、三光は日月星を指し、世界を照らす明るさの出所で、人類が依拠する基本条件がこれである。
三綱は、中国の古人が最も尊重した倫理である。三綱とは、大臣として君主に尽くし、子供として親に尽くして孝行し、妻として夫に尽くすことを言う。もしこの三つの関係に矛盾が現れた場合、君臣関係が首位として選択されるべきで、その次が親子関係、それから夫婦関係という順番で並ぶものである。
8,曰春夏,曰秋冬,此四時,運不窮。曰南北,曰西東,此四方,應乎中。
春夏秋冬という季節を四時と称する。中国の祖先は、遥かに依然から、北斗七星の柄杓の柄が向いている方向が、季節の対応していることを発見していた。柄が、それぞれ東、南、西、北に向かっている時に、季節がそれぞれ春、夏、秋、冬に対応しているというものである。四季は絶えず交替して果てがない。
東西南北は、地理的な四つの方向であるが、いずれにせよ中心を確定すれば、他の方向を見ることができる。ここの中心とは、東西南北の概念から生まれたもので、同時に四方は中心を対象にして言ったものである。
9,曰水火,木金土,此五行,本乎数。曰仁義,礼智信,此五常,不容紊。
水・火・木・土の五行は、本来(数)に根本を置いている。古代、人々は天地の間の陰陽という二つの機運が、五行の形に生まれ変わったと考えた。即ち、天一が水を生み、地二が火を生み、天三が木を、地四が金を、天五が土を生み、こうしてつくられた金・木・水・火・土を五行と呼んだ。五行には、相生(そうじょう)と相克(そうこく)の理があり、これは世のすべての物に通じ、自然の理はすべてここから派生してきたといわれている。
仁・義・礼・智・信と呼ばれる五常は、乱れてはならない。五常の常とは、堂々とするという意味で、人であれば当然守らなければならない五つの正しい道理をいう。祖先たちは、宇宙万物の中で、人を最も大切にした。その理由は、人は禽獣とは異なり、人倫と道徳があるからである。それゆえ人倫と道徳のない人は、生物学的には「人」かもしれないが、社会的には「人」とは認めなかった。従って、伝統社会において、儒教の五常は社会全体の道徳的水準を維持するうえで、大きな作用を果たした。
10,稲粱菽,麦黍稷,此六谷,人所食。馬牛羊,鶏犬豕,此六畜,人所飼。
イネ,アワ、豆、麦、キビ、ウルチキビ、この六種の穀物は、人が食べるものである。ここでは、人が主食として食べるもののうち、代表的な六種類を取り上げて六穀とした。
馬、牛、羊、鶏、犬、豚、この六種類の家畜は、おもに人に飼われている動物である。これらの家畜は、主に食用や交通、輸送手段として利用されている。
11,曰喜怒,曰哀惧,愛悪欲,七情具。匏土革,木石金,絲與竹,乃八音
人は、喜(喜ぶ)、怒(怒る)、哀(哀しむ)、恐(恐れる)、愛(愛する)、悪(憎む)、欲(欲する)と呼ばれる七つの情を備えている。もし眼前の事情が、自ら望んだとおりになれば人は喜ぶが、望み通りにならないと、人は憤り怒る。美しいものを見れば、人はこれを愛するが、醜いものを見ると嫌悪する。悲しみ傷ついたり、恐れを抱いたり、欲望をもつのは、人皆に備わった情緒である。
八音とは、瓢箪、粘土、皮、土、石、金、生糸、竹など自然の素材でできた楽器、もしくは異なった音楽の形式を代表している。例えば、鼓は皮で作った楽器なので革にあたり、鐘は鉄で作った楽器なので金にあたる。
12,高曽祖,父而身,身而子,子而孫。自子孫,至玄曾,乃九族,人之倫。
高祖父、曽祖父、祖父、父と私、私と息子、息子と孫。家族は、お年寄りから孫までが全部揃って秩序が生まれる。人類の発展は、子孫の繁栄が代々相伝わることに依拠しており、輩分※の呼称によりこれを明確にする。
※輩分(はいぶん)…日本語では「世代」が一番近い意味。兄弟は、同じレベルの輩分であり、自分より上の世代を長輩、下の世代を小輩と称する。前輩、後輩という言い方もあるが、後輩を他人に使うと失礼にあたるので、これはもっぱら自らを謙遜する場合に使う。
息子、孫、ひい孫、玄孫を下四代、この下四代に上四代(高祖父、曽祖父、祖父、父)に、自身を加えたものを九族と称する。子々孫々と一代一代繋がるのは、血脈が伝わることと長幼の尊卑にかかわっており、血統的に正常な人間関係は、秩序を伝えることにかかわっている。
13.父子恩、夫婦従、兄則友、弟則恭、長幼序、友与朋。君則敬、臣則忠。
此十義、人所同。
家庭に於いては、父母は子供に関心を寄せ、子供は両親に孝行を尽くして尊敬する。夫は妻を尊重し、妻は夫を思いやる。兄弟の間では、弟は年上の兄を尊重し、兄は弟を愛護する。人と人との交際往来においては、兄弟は無論のこと友人関係においても、年上を先に、年下を後にして、真心をもって接する。古代人が講じた長幼の序は、伝統的な美徳であり、今日においても人が受益して浅からぬものがある。
古代の君臣の道とは、君主は臣下を尊重して、それらを尊重し、臣下は君主に対して忠誠を捧げ、自らの本分と職分をつくす。
このように、名なる君主と賢い臣下であってこそ、はじめてよく国家を治めることができ、民衆を豊かにすることができる。
父に慈しみがあり、子に孝行があり、夫に温かみがあり、妻が従順で、兄に情があり、弟は恭しく、崩に信があり、友に義あり、君主に敬あり、臣下に忠あり、この十則が、人々が厳格に守るべきものであり、そうしてこそ社会は安定し、生活は吉祥平和となる。
Q。問題討論
1.あなたの家に、兄弟姉妹はいるであろうか。いたとしたら、日常でどのように接しているだろうか、事例を挙げて説明してみよう。
2.朋友に接するとき、「真」が貴ばれる。あなたが他人に「真」で接するとき、獲られるものとは何か?
3.以前の君主時代には、国民は君主に忠誠を尽くさなくてはならなかった。現在は民主政治であるので、国民は国家に忠誠を尽くす。われわれはどのように国家に忠誠を尽くしているだろうか。
翻訳 斎藤 猛
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