【脱党支援センター2020年8月13日】
中国では6月から、南部を中心に大規模な洪水に見舞われている。国内外の一部の専門家は、中南部を流れる長江に位置する巨大水力発電ダム、三峡ダムの洪水抑制能力について疑問視し、長江上流での記録的な豪雨でダムが決壊する可能性を指摘した。米国の専門家は、三峡ダムが安全上に大きな問題が起きれば、統治の合法性を主張する中国共産党政権にとって、致命的な打撃を与えるとの見方を示した。米ボイス・オフ・アメリカ(VOA)が8月11日、報じた。
中国当局は長年、三峡ダムは「万年に1度」「千年に1度」の大洪水を防げると宣伝してきた。国営新華社通信は2003年6月1日に発表した評論記事で、三峡ダムは「万年に1度の洪水を抑制できる」と強調した。
しかし、今年に入ってから、中南部地域で数カ月にわたり深刻な水害に見舞われた後、中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報は、三峡ダムの「(長江)中下流地域での豪雨に対応する洪水災害抑制能力は限られている」との見方を示し始めた。中国紙・経済日報を含む一部の国内メディアは、三峡プロジェクトは長江流域での洪水防止システムの一部にすぎず、「万能ではない」と主張した。
三峡ダムの総貯水量は393億立法メートルで、洪水調節総容量が221.5億立方メートル。しかし、ダム上流の通年の入水量は4500億立方メートル。洪水調節総容量は、上流入水量の5%にも満たない。今年6月29日以降、三峡ダムは複数回、水門を開き放水を行った。
米スタンフォード大学フーヴァー戦争・革命・平和研究所(Hoover Institution、以下はフーヴァー研究所)のマイケル・オースリン研究員は、VOAに対して、三峡ダムだけでは深刻な洪水を抑制できないと指摘した。豪雨が続き、長江上流地域にある古い小型ダムが故障すれば、「壊滅的な」事態が起きる。
長江流域の洪水問題を研究する米アラバマ大学のデイビット・シャンクマン地理学教授は同様に、三峡ダムは「今年のような大洪水に対応できない」とした。シャンクマン教授は、「三峡ダムの洪水抑制総能力は、ダム下流と長江中流地域の洪水抑制総能力のわずかな一部だ。一部の洪水は貯水できるが、今の深刻な状況では役に立たない」と話した。
中国当局が国内外に向けた報道において、意図的に水害の深刻さを隠そうとしたと指摘されている。今年6月初め、広西チワン族自治区の各地では猛烈な雨に見舞われ、水害が拡大した。人民日報は6月9日のツイッターに投稿し、大雨に見舞われた後に天気が回復し、同自治区の「桂北地域は、翠玉のように青々としていて、絵画のように美しい」とした。
また、国営新華社通信のSNS微信アカウントは7月21日、長江第2号洪水について記事を発表した。同記事は、擬人化した「洪水」を第一人称で記述し、「皆さんが『第1号洪水』が私よりすごいと思っているなら、それは間違いです。皆さんにこっそり教えますが、私は今、出かけたばかりなのに、三峡ダムの入水量が急に上昇した」「私は気性が激しいので、気を付けなければ水害や土砂崩れを引き起こすかもしれない」とした。中国人ネットユーザーがこの記事について強く非難したため、その後、同記事は取り下げられた。
マイケル・オーリンス氏は、水害や三峡ダムに関して、中国当局の透明性が欠けているとの認識を示した。「中国当局が三峡ダムのリスク、同ダム上流に位置する小型ダムのリスク、住民の避難措置、食糧や電力の保障について情報開示ができるか、透明性を持つことができるかが最大の問題だ」
三峡ダムの洪水抑制能力への疑問が強まるにつれ、同ダムの潜在的な危険についての懸念も拡大した。新華社通信は7月18日、同ダムに「変位、漏出、変形」が見られたと異例にも報じた。報道は具体的な数値を示さなかったが、国内外では三峡ダムの決壊に関する危機感が一段と強まった。人民日報傘下の「中国経済週刊」は、中国工程院の王浩・院士らの話を引用して、国内外の疑念を払しょくしようとした。王院士は「洪水防止能力は、水に浸かれば浸かるほど、100年内にかえってますます頑丈になる」と話した。中国水力発電工程学会の張博庭・副事務局長は「仮に、原子爆弾が直接ダムに命中したとしても、せいぜい大きな穴を開けるくらいだ」と述べた。
米国の専門家は、王院士らの見方を否定した。カリフォルニア州のパシフィック・インスティテュートの所長で水文気候学の専門家であるピーター・グリック氏は、「ダムは、時間の推移につれて頑丈になることはない。ダムは建設完了の時にその構造が決まる」と強調した。また、同氏は三峡ダムが原子力爆弾に攻撃されるというのは「出まかせだ」と批判した。グリック氏は、「大型ダムによる環境への破壊を認識したため」、一部の国の政府は大型ダムの撤去工事を進めていると反論した。
中国当局の最新統計によると、7月22日までに、国内洪水の被災者は4500万人を上回った。142人が行方不明になり、320万人が避難した。倒壊家屋は約35万棟、経済損害は1160億5000万元(約1兆8000億円)にのぼる。
オーリンス氏は、今年の大洪水は「文化大革命以来、中国共産党が直面した最大の課題だ」と指摘した。
「党と政府は、『三峡ダムは安全だ』と国民に強調しているが、治水が失敗し、ダムの安全性に問題が起きれば、党の統治の合法性に最も致命的な打撃を与える。これにより発生する経済損失や農業生産問題などで、中国で抗議活動や反体制デモが起きるからだ。三峡ダム問題は共産党政権が最も懸念している『ブラックスワン(めったに起こらないが、壊滅的被害をもたらす事象)』であろう」
新華社通信はこのほど、8月中旬にも三峡ダム地域では少なくとも2回の大雨に見舞われると伝えた。長江流域における中国当局の治水能力が依然として問われている。
転載大紀元
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